道の話題51「観光と道~地域を輝かせる道の力」

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「日本風景街道」の取組が全国各地に広がっています。これは、国土交通省が道路からの景観の美しさに磨きをかけ、道を地域の観光資源に育てようと、国土交通省が2007年に制度を創設したものですが、147ルート(2026年3月6日現在)を数えるまでになりました。
 地元住民や行政機関、地元企業などが地域資源の魅力向上のために協力して取り組むこのプロジェクトは、地域の新たな魅力を発掘し、ドライブ観光をより楽しくしています。その代表例は、「日本一きれいな道」を目指して草刈りやゴミ拾いを続けている「ビーナスライン」(長野県)、東日本大震災後、地元での就職を願う高校生が企業誘致策として提案した「ふくしま浜街道ハッピーロード」(福島県)等々。
 ちなみに当社のご当地北海道では、米国のシーニックバイウェイ制度に倣った「シーニックバイウェイ北海道」が2005年から本格的に始まり、これが日本風景街道の先駆けとなったのですが、これに指定された15ルート(2026年3月4日現在)が風景街道にも登録され、全国最多の登録数を誇っています。
 今や道路は、単なる人の移動や物の輸送のためのインフラというだけではなく、観光においては地域の風景を楽しむための道具としても重要な役割を果たしています。そして、各地で整備が進んでいる「道の駅」は、地域の食や産物のショーケースとなり、ドライブ観光の楽しさを増し加えています。

 しかし考えて見ると、道が観光の主役となるケースは昔からありました。どんなケースでしょうか?
例えば、「絵になる坂」です。異国情緒あふれる「長崎・オランダ坂」、清水寺へと続く石畳の「京都・三年坂(産寧坂)」、大林宣彦の映画の舞台となった「尾道・千光寺新道」等々、観光案内に登場する歩いてみたくなる坂道は数多あります。
 北海道も魅力的な坂にはことかきません。函館には、映画やCMにしばしば登場し日本一の坂とも言われる「八幡坂」、小樽には、若き日の明治の文豪が通った小樽商科大学に続く「地獄坂」、港を見下ろす絶景「船見坂」、そして最近なら、北海道ならでは直線道路が魅力の「ジェットコースターの道」(美瑛町)や「天に続く道」(斜里町)など、人気の観光スポットになっています。

 多くの人が、タイパ(タイムパーフォーマンス)の日常生活を過ごしている現代、観光のスタイルも、次々とスケジュール通り車で廻る名所巡りから、ゆったりとした気落ちで非日常の時間を楽しむ形に変わってきました。ゆっくり歩いて楽しむ観光が求められているのです。

 そのようなニーズに応える良いお手本になるのが、米国のボストンの「フリーダムトレイル」です。1951年に造られたこの遊歩道は、中央部分に赤レンガが埋め込まれていて、これに沿って全長約4㎞の道筋をたどると、草創期の米国の歴史を刻む州会議事堂や教会、墓地、帆船、地標など、ボストンの主要な観光地16か所を巡ることができます。

フリーダムトレイル沿いの名所に埋め込まれたマーク(出典:Wikipedia「フリーダムトレイル」)

 日本にも有名な散歩道はいくつかあります。
 例えば、京都の「哲学の道」。銀閣寺と南禅寺の間を結ぶ約2㎞の小径ですが、20世紀初期の著名な哲学者西田幾多郎が、毎朝この道を散歩しながら思索にふけったことにちなんで名付けられました。会が得ま
 避暑地として知られる軽井沢にも、戦前ここに集った外国人や文化人のゆかりの「水車の道」「犀星の道」「ハッピーヴァレーの道」と名付けられた散歩道があり、当時の面影を留めています。

桜が満開の哲学の道(出典:Wikipedia「哲学の道」)

 道には、地域の魅力を引き出し、輝かせる力があります。美しさ、楽しさを生み出すポテンシャルも内に秘めているのです。
 人口減少が続くわが国では、地方の町の活性化が大きな課題となっています。その解決に向けての一つのキーワードは、地域の魅力の発掘と考えますが、道の持つ力にも目を向けて、上手く活かしたいものです。

2026年3月第1号 No.179
(文責:小町谷信彦)