道の話題33「道路とマラソン~北海道マラソンへの期待」

 コロナ禍が始まってから、運動不足解消のためなのか、街中でジョギングや散歩を楽しむ人々の姿を目にすることが多くなりました。それは統計的にも笹川スポーツ財団による調査で裏付けられています。2年毎にジョギング・ランニングの実施状況をアンケートで調べたこの調査で、2020年のジョギング・ランニング実施率は10.2パーセント(2018年より0.9ポイント増)と過去最高を記録したとのことです。調査を開始した1998年は6.9パーセントで、増減を繰り返した後、2007年の東京マラソン開始を契機に増加に転じ、今回のコロナがそれを後押しした格好です。

 東京マラソンは市民マラソン大会を全国に波及させ、多くの市民ランナーを生み出す原動力となりましたが、東京マラソン方式、すなわち「一流ランナーと市民ランナーが参加するフルマラソン」の先駆けとなったのは、1987年に始まった北海道マラソンでした。
 ご存じの通り、2021年の東京オリンピックのマラソンは、急遽大会直前に猛暑対策のために会場が東京から札幌に変更され、話題を集めましたが、これは国内で唯一夏場に開催されていた北海道マラソンの実績がなければあり得なかった離れ業でした。マラソンは、公認コースとしての条件を満たすと同時に、大会運営には多くのボランティアが参加し、運営ノウハウも必要とされることから、大会の実績がとても大事なのです。
 ところで、マラソンの公認コースとして認定されるには、距離は42.195㎞より短くてはならず誤差は42m以内、スタート地点からゴール地点までの標高の減少は42m以内、スタート地点とゴール地点の直線距離の合計は競技距離の2分の1以下など、様々な条件を満たしていることが必須です。
 ちなみに、2011年のボストンマラソンでは、ジョフリー・ムタイが2時間3分2秒の好タイムで優勝したのですが、スタート地点とゴール地点の直線距離の合計が競技距離の2分の1を越える91%だったため世界記録として公認されなかったそうです。中々厳しいですね!
 余談ですが、道路の舗装については、細かい規定がなくアスファルトかコンクリートで舗装されていればOKなので、コースによって舗装の固さは様々。固い舗装は足への負担が大きく、ランナー泣かせのコースになり、嫌われているようです。
 
 さて、北海道マラソンは、札幌の中心部の大通公園をスタート・ゴール地点として北海道大学のキャンパスや中島公園など、緑豊かな美しい札幌の街を堪能できるコースとなっており、道外の方々にとっても魅力的なマラソン大会として人気を集めています。そして、道内の方々にも四季折々に展開される大通公園のイベントのひとつとして定着し、夏の風物詩として親しまれています。
 道路は言うまでもなく、車が走るためのインフラ施設として日常生活に欠かせないものですが、「よさこいソーラン祭り」や「北海道マラソン」では、その舞台としてスポットライトを浴び、想定外の価値を生み出していると言えそうです。
 北海道マラソンは、かつて全国ネットでTV放映され、札幌の町の魅力と夏の北海道の爽やかな空気感を道外の方々に伝える広告塔となっていましたが、残念ながら放映打ち切りとなってしまいました。夏の酷暑が常態化した今こそ、北海道の夏の風物詩として全国放映を復活させ、爽やかや涼風を画面越しに日本列島中に送り込みたいものです。

2022年5月第1号 No.119号
(文責:小町谷信彦)