道の話題 15「掃除の手順 」

掃除の手順

昭和世代の私にとって、子どものころの「お手伝い」の代表は玄関掃除だった。ホウキで塵や砂ボコリを掃き、その後に三和土の水洗い。面倒くさいなぁ、と思いながらやる時もあれば、遊び半分でやる時、子どもの掃除なんてそんなものだ。特に三和土(たたき)の水洗いは、いつの間にか水遊びになってしまいこっぴどく叱られたものだ。同じような思い出を持つ方もいらっしゃるかもしれない。いや、私が特にいたずら小僧だったのかもしれないが。。。

さて、北海道もようやく春めいてきて、この原稿を書いている3月下旬には、例年より早く積雪がゼロ。道路が非常に埃っぽくなってしまう時期だ。ここ数年は、北海道にも黄砂がやってきたり、PM2.5もずいぶんと増えてしまった。今は三和土の水洗いなどできないマンション暮らしだが、バルコニーに出ると砂埃や真っ黒な汚れに驚いてしまう。
海外では、この粉塵対策のために人口降雨を実験するとか、学校や公共施設には空気清浄機を設置するとかニュースで報じていたが、それよりも確実な方法があると思う。粉塵はなにも突然空気中に現れるものだけではない。多くの粉塵が一度地上に落ちてきて、それが再び舞い上がることも多い。その元を綺麗にすることも有効なこととなるはずだ。

北海道では冬の間に撒いた砂が春先になると、道路や歩道にずいぶんと残っていることに気づく。これに加え、黄砂やPM2.5の汚れもあるのだ。こういった砂埃・粉塵などの汚れとも日夜戦い、奮闘するのも道路維持管理の仕事の一つである。
まさに私の子どものころと同じ手順で、ホウキで掃き、水洗いするのだ。さすがに道路(車道)となると家庭のホウキとは少々違うモノを使うが、歩道は昔懐かしい竹ぼうきが今でも必需品。人力で竹ぼうきを使い、冬の間のゴミを掃き集めていく。それを車道の端に寄せておくと、専用の路面清掃車が掃除機と同じ原理でゴミを吸い込んだり、強力なブラシを使いながらかき集めたりする。ロードスイーパーと呼ばれる車輛だ。
ゴミを集めた後には、散水車で水を撒いていく。そう、玄関の三和土掃除の手順と全く同じなのである。この散水車で流された汚水は、側溝に流れ込むのだが、ここに溜まったゴミも定期的に清掃するのは当然だ。強力な吸引機能を持つ特殊車両がホースでゴミを吸い込んでいく。このことで、側溝の機能が保たれ、大雨の時にもしっかりと水が流れるように維持することが肝心なのだ。

 

散水車 

散水作業の様子

これらの作業を行なうのは、騒音や交通の渋滞の原因になり兼ねない。従って、場所によって時間帯を考えて行う必要がある。住宅街で深夜の作業はできないので、原則昼間の作業になる。そして、街中、中心部は人通り、交通量が一番少なくなる早朝の作業が多い。
早朝の5時から6時ころには都市機能が夜から朝に変わるころ。そのころが繁華な街中での作業のピークになるのである。私が職場に出勤する時間帯、札幌市内中心部ではこういった作業に毎日出会う。

これから、観光客がさらに増える季節。実は、こういう日々の作業の積み重ねが綺麗な街、心地良い環境を作っているのだ。

道路は作るという工程があり、その後は維持管理という工程になる。ここをしっかりやることが環境に役立つのはもちろんだが、大きく考えるとお金の節約、税金を大事に使うということにも繋がっているのだろう。

早朝の出勤のたびに出会う道路清掃の車輛。それを見ると、少しは見習い職場の掃除をしなきゃ、と思うのだ。

*添付写真の出典: 国土交通省山形河川国道事務所ホームページ「はたらく車」
www.thr.mlit.go.jp/yamagata/chiiki/working-cars/
(このサイトでは、散水車の他に除雪車などの道路維持用車両や排水ポンプ車などの災害対策用車両が写真で紹介されています。)

(札幌市 上野 貴之)
2019年4月第1号 No.57