道の話題20「オートリゾートネットワークとシーニックバイウェイ北海道」

オートリゾートネットワークとシーニックバイウェイ北海道

 年末年始は、一年を振り返るとともに新年の抱負を思い描く方も多いことでしょう。
2020年の北海道は、4月に白老町ポロト湖の民族共生空間“ウポポイ”オープン、8月に札幌での東京オリンピック・マラソン実施など、北海道観光を加速する話題が豊富な一年となりそうです。
 そこで温故知新。観光というテーマに関連して、北海道の道路を舞台に展開されたプロジェクトを振り返ってみましょう。

 まずは、「オートリゾートネットワーク」です。
 かれこれ30年余りも前の施策なのでご存知ない方が多いかもしれませんが、昭和63年(1988年)に当時の北海道開発庁(現在の国土交通省北海道局)が第5期北海道総合開発計画で提唱したもので、実は私も北海道開発局の担当者として草創期から関り、個人的にも思い入れの深いプロジェクトでした。
 どういうものかと言うと、質の高いオートキャンプ場と様々なアウトドア活動施設やフィールドを備えた複合施設の「オートリゾート」を道内各地に網の目のように整備し、マイカーやレンタカーでお金をかけず安く自然と親しめる北海道周遊のドライブ旅行が楽しんでもらおうというものでした。当時は、日本全国津々浦々、熱狂的なリゾートブームの渦中で、それまで見向きもされなかった片田舎にもテーマパークや高級ホテル、リゾートマンションが次々に作られていたのですが、高い利用料金や投資目的の施設ばかりで、普通の庶民が日常のストレスから解放されて自然の中で長期滞在を楽しむという本来の“リゾート”の趣旨とは裏腹な状況だったのです。それに加えて、北海道を訪れる観光客にとっての本道の魅力は“食”と並んで“自然”で、またドライブの適地であることや、旅行形態が団体旅行から個人旅行へと変化しつつあることを考え、低廉で自然が満喫できる宿泊施設としてオートキャンプ場がクローズアップされたのです。

 今でこそ、オートキャンプは夏のレジャーとしてすっかり定着した感がありますが、当時のキャンプと言えば、まだ、駐車場とテントサイトが別で、荷物を運ぶのに苦労したり、トイレも水洗ではなかったりで、余程のアウトドア好きでなければ家族連れにはハードルが高く、旅行の際の宿泊施設として利用する人はほとんどいないという状況でした。
 そういう時代に、駐車スペースと一体となったテントサイトに一部はキャンピングカー用に電源や排水口、水道まで完備し、きれいに管理された水洗トイレを備えたオートキャンプ場、そして、遊べる施設やフィールドを備えた「オートリゾート」は、それまでのキャンプ場の概念を抜本的に変えたと言えるでしょう。

キャンピングカーにも対応したオートリゾート滝野(国土交通省北海道開発局HPより)

 そして、北海道発のオートリゾートネットワークは道外にも波及し、建設省(現在の国土交通省)の都市公園補助制度などの後押しもあり、オートキャンプ場の整備が全国的に進みました。また、一方では、国内のキャンピングカー保有台数も、1988年時点で約1万6千台にすぎなかったのが、2018年には11万台を越え、さらには専門のレンタカー会社ができるなど、そのニーズは高まっています。

 次に取り上げたいのは、「シーニックバイウェイ北海道」です。
“シーニックバイウェイ”とは、景観(Scene)の形容詞シ―ニック(Scenic)と脇道・寄り道を意味するバイウェイ(Byway)を組み合わせた言葉で、地域と行政が連携し、景観や自然環境に配慮し、地域の魅力を道でつなぎながら個性的な地域、美しい環境づくりを目指す施策として米国で始まったとのことです。
 そして、「シーニックバイウェイ北海道」は、北海道開発局がこの米国の事例を参考に北海道にあった仕組みを考えて、平成17年度(2005年度)にスタートしたもので、北は稚内、南は函館まで全道で13ルート(2019年12月現在)が指定されています。北海道発のこのプロジェクトも国土交通省の「日本風景街道(Scenic Byway Japan)」という全国展開の施策に発展し、平成19年(2007年)から登録が始まりました。
 昨今、海外旅行者のレンタカー利用も増加し、北海道は益々ドライブ観光のメッカとしての地位を確立しつつありますが、「シーニックバイウェイ北海道」指定ルートで地元の活動団体により行われている植栽による花ロードづくりや沿道の清掃活動、地域を紹介する各種ツアーやイベントなどの様々な活動は、それに大きく貢献していると言えるでしょう。

シーニックバイウェイ北海道推進協議会の活動状況

 北海道の魅力を引き出す舞台として、道路にはまだまだ秘められたポテンシャルがあるような気がします。
 これまでも全国に先駆けたアイディアでフロントランナーになってきたように、叡智を集めて楽しい道づくりの新たな一歩を開いていきたいものです。

(文責:小町谷信彦)
2020年1月第1号 No.68号