道の話題 6「北海道らしい道路」

北海道らしい道路

北海道を訪れる人の多くは、雄大な大地をまっすぐに、まるで定規で引いたように一直線に伸びる道路に感嘆の声をあげます。ここは、アメリカ?オーストラリア? 一昔前、「でっかいどう、北海道」という北海道の観光キャンペーンのキャッチフレーズがありましたが、北海道の魅力の一つは、我が国の他の地域では見られない大陸的とも言える広大さにあることは間違いないでしょう。しかし、それだけではありません。美味しい食べ物、そして自然景観の美しさもあります。
さて、北海道の道路は、それを引き立たせているとも言えそうですが、そのルーツをたどってみましょう。

「道路は公園のようでなければならない。公園と同じように、通ることによって心が和むようにつくられ、維持されなければならない」(出典:「北の道づくり」北海道新聞社編)
戦後、札幌千歳間道路(通称“弾丸道路”)の建設を始め数々の道路を手掛け、北海道初の道路技術を次々に開発した高橋敏五郎氏の言葉ですが、先人はこんな素敵な思い、哲学で工事にあたっていたのですね。そして、この教えを受けた大谷光信氏が、美しい山岳景観と道路の線形の調和を第一に考えて造ったのが、昭和44年に完成した定山渓道路(国道230号線・札幌市)だったのです。
快適な速度で流れるように風景が楽しめるスムーズな道路線形は、北海道で初めて採用されたクロソイド曲線のなせる技でした。そして、深い谷には「橋はまっすぐ」という当時の常識を覆して景観と調和した大きく緩やかな曲線の無意根大橋を架け渡し、景観・環境保全と雪崩・土砂崩れ等の防災を両立させたとのこと。
さらに、仙境覆道は、紅葉を楽しんでもらうために谷側の柱をすべてなくしたルーバー形状とするという凝りよう。さすがですね。
また、興味深いのは、風向きと雪の現地調査結果から道路は極力西側をのり面にして両側の切土を避けたという設計上の工夫で、道路上の雪の吹き溜まり防止のために緩やかな傾斜とする現在の防雪切土にも繋がる考え方です。そして、この防雪切土は道路景観の向上にも大変有効な手法という点からも「北海道らしい美しい道路づくり」の様々な種が、この定山渓道路の中に埋め込まれていたと言っても過言ではないでしょう。

 無意根大橋

恥ずかしながら私も「公園のような道路」ではなく「公園の道路」を国営滝野すずらん丘陵公園で造った経験がありますがそれはさておき、現在、北海道開発局は、美しい道路環境づくり運動の「シーニックバイウェイ北海道」を推進しており、また、寒地土木研究所(国立研究開発法人土木研究所)の景観ユニットでは「北海道の美しい道づくり」についての研究と普及活動を進めています。*1
北海道ならではの絵になるような美しい道が至る所で創出され、観光立国北海道が文字通り実現することを願ってやまないところです。

*1 景観ユニットがアップしている道路総合情報サイト「北の道ナビ」の「Photo Garally「素敵な北の道」」には  北海道の素敵な道の写真が掲載されています。http://northern-road.jp/scenic/index.html
(文責:小町谷信彦)  2018年5月第1号