道の話題19「雪国ならではの道路施設、防雪林」

雪国ならではの道路施設、防雪林

北海道では、今年も冬将軍がやってきました。外は昨日までとは打って変わって、一面の銀世界です。
この雪のお陰で北海道はスキーのメッカですが、住民の暮らしに様々な弊害をもたらします。雪国では、雪を克服するための知恵がいろいろ積み上げられてきましたが、その一つが防雪林です。

防雪林の始まりは鉄道での利用で、第1号は明治26年(1893年)に東北本線水沢駅・小湊駅間の38か所、延べ50ヘクタールで整備されたのですが、その一部、野辺地駅周辺の「野辺地防雪原林」は、今なお健在で鉄道記念物に指定されています。
北海道でも数多くの鉄道防雪林が造られ、今も冬期のJRの安定的な運行に寄与していますが、その一つ、昭和17年(1942年)完成の宗谷本線剣淵駅・士別駅間の鉄道防雪林は、その歴史的価値から土木学会選奨北海道土木遺産に選定されています。

一方、道路の防雪林はと言うと、鉄道に比べると歴史は浅く、1977年に北海道の国道12号岩見沢市岡山地区に造成されたのを皮切りに、1979年に高速道路(東北自動車道 大鰐弘前~青森間;道央自動車道 札幌~岩見沢間)にも導入され、東北以北の高速道路や北海道の国道などを中心に吹雪対策として各地の積雪地で造成されました。
ところで、鉄道防雪林は、元々は営林的手法が取り入れられ木材が副産物として生産、売却されていたのですが、1980年以降は木材単価の下落し、経済的自立が見込めなくなり、現在では防雪だけを主目的として造成・管理されています。

もう一つ、雪国の道路に特有の主に冬に役立つ道路施設として、視線誘導樹があります。
これは、路側や中央分離帯に連続的に樹木を植えて、吹雪や濃霧の際に道路の進行方向にドライバーの視線を誘導するもので、特に背景が雪景色の場合、黒っぽい木の方が光る視線誘導標よりも目立ち、視認性が高いという効果があります。ただ導入に当たっては、木の作る日陰が路面凍結を生み交通事故を誘発する危険がありますので、導入の可否を判断する際には十分な検討が必要となります。

さて、雪国ならではの樹木の活用例をご紹介してきましたが、欧米では日本より長い鉄道や道路の歴史があるにもかかわらず、意外と防雪林の話を聞きません。しかし、考えて見るとその理由は明らかで、日本のように豪雪地帯に多くの都市が発達した国は世界中で他にはないということなのです。実際、世界の豪雪都市ベスト10の上位6位までを日本の北海道、東北、北陸の諸都市が独占していることを知ると納得がいきます。ちなみに1位は青森市、2位旭川市、3位札幌市とのこと。

「克雪から利雪、親雪へ」というフレーズが唱えられ始めたのいつ頃からだったでしょうか。
「雪に親しむ北海道ライフ」を誇らしく世界に発信できる冬の生活環境と暮らし・文化を育んでいきたいものです

 

道路防雪林(出典:国土交通省北海道開発局札幌開発建設部HP)

(文責:小町谷信彦)
2019年12月第2号 No.67号