道の話題48「キャンピングカーと北海道の道路の話」

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 最近、夏になると札幌近郊の道の駅などでキャンピングカーを目にすることが多くなりました。
 しかもナンバープレートを見ると道内だけではなく、全国各地から集まっていることがわかります。
 実際(一社)日本RV協会によると、全国のキャンピングカー保有台数は155,000台(2023年)で、調査を始めた2005年の約3倍に増加したとのことです。今から40年近く前の1988年、北海道開発庁(現在の国土交通省北海道局)が「オートリゾートネットワーク構想」を北海道開発総合計画の一環として打ち出しましたが、その当時の全国のキャンピングカー保有台数がわずか16,000台だったことを思うと隔世の感があります。
 当時、日本中の至る所で高級ホテルやテーマパークが作られ、投資目的のリゾートマンションが乱立というリゾートバブルでしたが、この構想は、そのような富裕層向けではなく、「良質なオートキャンプ場を核としたリゾート」を「オートリゾート」と称し、それを北海道の要所要所に整備して、一般の人達にゆっくり長期のバカンス旅行を楽しんでもらおうというものでした。残念ながら、この庶民のための「オートリゾート」は実現しませんでした、これが起爆剤となって1990年代にオートキャンプがブームとなったのは、一つの成果でした。
 しかし、なぜ北海道開発計画、それも道路施策としてオートキャンプ場という畑違いにも思えるアイディアが提案されたのでしょうか?
 当時、北海道の幹線道路の整備については、道外の路線と比較して交通量が少なく、「熊のための道」などと揶揄されることすらあるほど厳しい予算状況でした。とは言え、広大な北海道が日本の食糧基地、観光立国という重要な役割を果たす上で、広域的な道路ネットワークは不可欠で、定住人口の少なさをカバーするために交流人口(主に観光客)を増やそうと考え、オートキャンプに着目したわけです。
 実は私もこのプロジェクトには北海道開発局の担当者として関わったのですが、自腹を切って米国オートキャンプ場視察ツアーに参加したことを懐かしく思い出します。南北縦断が3000㎞近くにも及ぶ米国では、リタイヤしたシルバー層が夏は北に、冬は南へと、家のような大型トレーラーを牽引して一年中キャンプ生活を送っていました。その姿を見て、さすが西部劇のカウボーイの末裔は違う、と感心したものでした。
 そんな国土が狭く、お国柄も違う日本では、バス・トイレ付きのキャンピングカーは中々普及しませんでしたが、団塊世代以降がリタイヤして人口の3割が高齢者という高齢化社会となった現代、ようやく本格的なキャンピングカーが静かなブームとなっているようです。
 そして、最近は「グランピング」という大型テントの中をゴージャスなインテリアで装備し、ホテル並みの快適さを追求したアウトドア施設が人気を集めています。

 戦後80年、キャンプの歴史も飯盒炊爨(はんごうすいはん)の学校キャンプに始まって、家族単位のオートキャンプ、グランピング、キャンピングカーと世の流れに合わせて、キャンプも進化し続けているようです。
 道外の皆さん、北海道の夏のキャンプは最高ですよ! 最高の環境、最高の食べ物、最高の風景!
 是非、信号のない北海道の一直線道路で、快適ドライブも堪能してください。ただし、スピード違反にはご用心を!

2025年9月第1号 No.170
(文責:小町谷信彦)