道の話題50「北海道らしい道路 再考」

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 国際的市場調査会社ユーロマスターの「世界の観光都市ランキング」が今月(2025年12月)発表になりました。これは55の関連指標に基づく総合評価ランキングなのですが、1位のパリ、2位のマドリッドに続く3位に東京が2年連続でランクイン、大阪は11位、京都は18位でした。
 一方、政策投資銀行北海道支店の調査(2023年)によると、訪日外国人の希望訪問先は、1位が東京で、2位は富士山、3位は北海道でした。
 この結果から、外国人観光客は日本の都市だけではなく、自然にも魅力を感じていることがわかります。

 そんなわけで、当社のご当地・北海道でもインバウンドへの期待はますます膨らんでいます。
 そこで本稿では、北海道の観光的価値をさらに高めるために、道づくりに関しても何か工夫ができないか、そんなことを少し考えてみたいと思います。

 さて皆さんは、スポーツエンタメという言葉をお聞きになったことはないでしょうか?
 これは、スポーツ施設が主目的のスポーツ観戦だけではなく、様々なエンターテインメントの要素を融合させた新しい形の娯楽を意味していて、様々なプロスポーツリーグが取り入れつつあります。一昨年、北海道・北広島市に開設された日本初のボールパーク・Fビレッジ(日本ハムファイターズの新球場エスコンを含む複合施設)もこの代表例と言えるかもしれません。
 どうやら現代は、人々の物に対する要求水準が高くなってきただけではなく、時間の過ごし方についても贅沢になってきたということが言えそうです。例えば、コインランドリーにもカフェが併設され、洗濯物が仕上がるまでの時間もゆっくりくつろげるとか。

 これを道路に当てはめて考えると、道路の基本的な目的である人や物の移動・輸送手段に加えて、道を走ることを楽しむ、エンタメの要素を融合できないかという話になるわけです。
 そこでまず浮かぶのは「道の駅」や「オートキャンプ場」で、既に食や買物、温泉、そして様々なアクティビティが融合し、地域色豊かに個性を発揮しています。さらに伸びしろがあるので、これからの進化が楽しみです!

 では道路本体についてはどうでしょうか?
 以前のコラムでご紹介した「シーニックバイウェイ北海道」の取り組みにも期待したいと思います。
 ちなみに「バイウェイ」とは、本来「脇道」とか「寄り道」の意味です。そこに着目すると、美しい風景を眺めながらゆっくり走れるバイウェイ、つまり田舎道がもっとあっても良いのかもしれません。
 北海道らしい道路とは、どんな道路でしょうか?
 広大な大地に一直線に伸びた直線道路。こんなダイナミックな道路は北海道ならではなので、そこでの快速運転は快感です。
 しかし、中にはゆっくり低速でしか走ってはいけない、例えば制限時速30㎞の低速道路があっても良いのではないでしょうか?
 ゆったりとしたカーブを曲がると違うアングルの風景が前方に広がり、風景の変化が効果的に演出された道路線形。後続車に煽られることなくドライバー自身も風景を楽しめる道路。こんな道路なら、低速運転に後ろめたさを感じている高齢者ドライバーものんびり安心してドライブが楽しめます。
 いわば、都会時間の高速道路とは対極の大自然や田舎の中でのスローライフに調和したスローロード、こんな道路も北海道ならではの魅力になり得ます。
 エンタメとは真逆な発想ですが、そんな北海道時間を楽しめる、高齢者にも優しい道づくりというのも一興かもしれません。

2025年12月第2号 No.175
(文責:小町谷信彦)