道の話題 29「交差点の話~ロータリーからラウンドアバウトへ」

交差点の話~ロータリーからラウンドアバウトへ

 今回は、いきなりですが道路標識のクイズです。
下の標識は円形(環状)の交差点の右回り通行を示す道路標識ですが、片方は円形交差点で片方は環状交差点です。さて、どっちがどっちでしょうか?(相当な道路通の方でないと難しい問題だと思いますが、正解は文末をご覧ください。)

 
 おそらく、皆さんは円形交差点とか環状交差点と言われてもピンとこないと思いますが、「ロータリー」と言えば駅前広場のロータリーなどを連想される方も多いことでしょう。実は「ロータリー」の道路交通法上の正式名称が「円形交差点」なのです。
一方、「環状交差点」も道路交通法での正式名称なのですが、こちらは一般的には「ラウンドアバウト」と呼ばれています。
それでは、この「円形」と「環状」と何が違うのか? 実は形は同じなのに交通ルールが違うという紛らわしい交差点なのです。

 まずは、「ロータリー」(円形交差点)ですが、歴史をたどると欧州の辻馬車の時代に馬車がスムーズに交差点を通過できるようカーブを大きく取り中央に島を設けたのがその始まりとされています。19世紀後半には都市の中心部などに景観にも配慮したロータリーが作られ始め、パリのシャルル・ド・ゴール広場(エトワール広場)はその代表例です。この広場には5本の道路が集まっていましたが、後から中心部に凱旋門が建てられ、それに合わせて周回道路が造られ円形交差点になったとのことです。
 

シャルルドゴール広場(出典:Wikipedia)

 日本では、戦前に整備された旭川常盤ロータリー(1936(昭和11)年完成)や小樽桜町ロータリー(1938(昭和13)年)などが現在も使われていますが、交通量が多くなると円形交差点内で車が動けなくなるという問題点から、自動車交通の増大とともにロータリーは衰退していきました。
 しかし、このロータリーの問題点を英国の交通研究所が調査、検討した結果、考案されたのが「ラウンドアバウト」(環状交差点)でした。
 では、ロータリーとラウンドアバウトとの違いはどこにあるのでしょうか?
 大きな違いは、ロータリーは交差点への進入車両が優先、一方、ラウンドアバウト(環状交差点)は交差点内の車両が優先という点です。日本では道路交通法で左方が優先とされているので円形交差点では進入車両が優先となりますが、ラウンドアバウトについては道路交通法に「環状交差点」という交差点内の車両が優先通行という特例を設けた新たな交差点の規定が加えられました。
 

このラウンドアバウトは、信号機の設置が不要な上、交差点の進入・通過速度の低下により重大事故の減少や歩行者の安全確保の効果が高いことから、1970~80年代にかけて欧州や英連邦に広がり、1990年代後半には世界の約15,000か所に拡大しました。日本でも2013(平成25)年の道路交通法の改正とともに長野県飯田市に第1号が誕生し、災害による停電時でも交差点での混乱が生じないという点が注目され、全国で整備が進んでいます。(2021年3月末現在126か所)

北海道でも道南の上ノ国町と道北の浜頓別町で整備されましたが、ラウンドアバウトの難点とされる広い敷地を要するという点も土地に余裕があり、地価も安い北海道の地方部では好適な手法とも言われていますので、今後の普及を期待したいですね。

糸満ロータリーラウンドアバウト(出典:Nori033 - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=44063327による)

さて、最後にまたクイズです。この二つの道路標識の色と形が違うのに皆さん気付かれたと思いますが、その違いにはどういう意味があるのでしょうか?

正解は、こちらをご覧ください! 道路の雑学 | 草野作工株式会社 ~「かたち」は、人を想う、その先に。 (kusanosk.co.jp)

<最初のクイズの正解>  左側の標識:「環状交差点の右回り通行」  右側の標識:「円形交差点の右回り通行」

 

**トリビア**
【国際ロータリー】 ロータリークラブをメンバーとする国際的な社会奉仕連合団体で、名前の由来は、最初のクラブが例会の開催場所を輪番(ロータリー(「回る」))で提供していたことから命名された。

2021年6月第2号 No.100号
(文責:小町谷信彦)