道の話題28「北海道の桜並木いろいろ~二十間道路、登別、新川、桜ケ丘」

北海道の桜並木いろいろ~二十間道路、登別、新川、桜ケ丘

 今年(2021年)は例年になく桜の開花が早く、桜前線のゴール根室の桜も昨年よりも1日遅いものの、平年に比べ8日早い5月10日が開花宣言でした。北国では待ちわびた春の早い到来はことのほか嬉しいのですが、新型コロナウイルスの自粛でお花見もままならず、酒盛りが大好きなオジさん方にとっては、今年は寂しい春だったかもしれません。

 花見の歴史は古く、平安時代の貴族たちが桜をめでて歌を詠んだ花見の宴にまで遡れますが、農民たちも桜の花を稲の花に見立ててその咲き具合でその豊凶を占い、豊作を祈願する大事な季節行事だったようです。諸説ありますが、「サクラ」の「サ」は田の神様、「クラ」は神様の座る場所を表し、花見は山から里に降りてきた田の神様を料理と酒でもてなして豊作を願ったというわけです。

 さて、北海道で花見と言うと函館の五稜郭、札幌の円山公園、松前の松前城等々、いろいろ名所がありますが、桜並木もいろいろです。

 中でも最も有名なのは静内二十間道路でしょう。明治期に置かれた宮内省の御料牧場内に造られた幅20間(約36m)の道路が二十間道路なのですが、同牧場を視察する皇族方を迎えるための行啓道路として整備するため、1916(大正5)年から3年がかりで近隣の山からエゾヤマザクラなどが移植されました。約7㎞の直線道路沿道の2,000本を超える桜並木は「日本の道百選」「さくら名所百選」「北海道遺産」にも選ばれています。
(参考情報:新ひだか町ホームページ 二十間道路桜並木)

二十間道路(新ひだか町・静内)(出典:新ひだか町HP)

 「登別桜並木」もJR登別駅から登別温泉までの約8㎞の定評のある桜並木で、沿道の約2,000本のエゾヤマザクラが「花のトンネル」となり圧巻ですが、もっぱら車窓からの花見というスタイルです。この桜並木も1934(昭和9)年に天皇陛下誕生を記念して植樹されたということで中々の歴史ですね。

 さて、道内最長の桜並木はどこか? 定かではありませんが、札幌の新川通の長さ10.5㎞区間(北区24条~手稲区)が最長と言われています。新川は1887(明治20)年に開削された歴史的な人工水路なのですが、この新川通桜並木は新しく、植えられてまだ20年あまりです。しかし、この桜の植樹は河川法による規制の壁に約30年間阻まれてきた地元住民の悲願でした。地元で大事に育てられてきましたが、大きく熟成していくこれからが楽しみです。
(参考情報:「北の道草」【新川桜並木】札幌桜の名所!)

新川通(札幌市) (写真提供:北の道草)

 最後にご紹介したいのは、函館・五稜郭の花見ついでに立ち寄られることをお薦めしたい桜並木、「桜ケ丘通」です。住宅街にある約800mの通りなのですが、地元住民が昭和初期に植え、丹精込めて育てたソメイヨシノが大きく成長し、見事な花のトンネルになっています。
(参考情報:函館市公式観光情報サイトはこぶら 桜が丘通の桜並木)

桜ケ丘通(函館市)(写真提供/函館市公式観光情報サイト「はこぶら」)

 「花」と言えば「萩」や中国から伝来したばかり「梅」が代表的だった奈良の都の万葉集の時代。その頃は、いわば脇役だった「桜」ですが、平安時代の古今和歌集では一気に主役の座に取って替わりました。以来、不動の地位を守り続けているのですから、桜の花には余程時代を超えて日本人の心に響く魅力があるのでしょう。

 英語で桜は一般的には ”Cherry blossom” ですが、最近では海外にも日本の花見文化が広く知られるようになり、 “Sakura” という外来語も良く使われているそうです。昨今、ヘルシーな食文化ということで和食が海外でも人気を集め、日本の文化全般への関心も高まっていますが、桜花が華やかに咲き、ぱっと舞い散るような儚く過ぎ去るうたかたの流行には終わらせたくないものです!

2021年5月第1号 No.97号
(文責:小町谷信彦)