橋の話題36「木橋~その魅力を問い直す」

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 橋と言えばコンクリートか鉄という現代、目にすることが少なくなった木橋ですが、「好きな橋」、「渡ってみたい橋」、「美しい橋」などの人気ランキングには、しばしば上位に登場します。
その魅力は何なのでしょうか?
 地域の人々に愛され守られてきた、その時間の積み重ねが、地域の愛着を増し、その美しさを一層際立たせているのかもしれません。
 しかし、木橋の価値はそれだけではありません。
 今年(2025年)8月に函館市で第7回全国木橋サミットが開かれましたが、そのテーマは「木橋の新たな技術展開」でした。洋の東西を問わず、木橋は太古の昔からの伝統技術でしたが、昨今、そのポテンシャルを再評価し、新技術によって、現代のニーズに対応した新たな形の木橋づくりが始まっています。
 木橋は、現代的視点からどんな魅力があるのでしょうか?
 一番の魅力は天然素材という点でしょう。日本は世界に冠たる森林大国、その風景には、木が絶妙に馴染みます。そして、その肌触りの温かいぬくもり、その人間の五感への優しさは、人工素材では決して生み出せないものです。
 また、木材の使用は、製造過程でのCO₂排出を抑制し、地球温暖化問題に寄与するだけでなく、間伐材の活用は、森を活性化し、国土を自然豊かな健全な状態に保つ上でも大きな役割を果たします。
 では、デメリットはないのでしょうか?
 確かにあります。コンクリート橋や鉄橋に比べると、建設コストや腐朽の問題があります。
 しかし、常に水につかる橋脚は耐久性の高いコンクリートや鉄骨で造り、私達の目や手が触れる橋板や欄干は木製という工夫や強度と耐久性の高い集成材を活用するなら、この問題は相当程度解決されます。
 そして今注目されているのは、災害時の迅速な復旧・復興用のための短時間で仮設可能な木製トラス橋です。最初にご紹介した木橋サミットでも、函館高専で開発中の自重が931㎏と軽量で、わずか3時間8分で仮設可能という木製ワーレントラスト橋が紹介されました。
 中々の優れモノで、早期の実用化が待たれますね!

 とは言え、何と言っても木橋の魅力は、風景と調和した情趣あふれる美しさです。
 例えば、東海道の大井川に架かる蓬莱橋(静岡県島田市)は、明治12年(1879年)に完成した全長897mの長大な木製の人道橋ですが、まっすぐに伸びる橋の姿は圧巻です。そして橋の中ほどからの富士山の眺望は絶景です。さらに「世界最長の木橋」というギネス登録も話題を呼んで、国内外の観光客の人気スポットとなっています。

 ちなみに、NIKKEI STYLE 2020年4月27日には10名の専門家が選んだ「伝統の技と先人の情熱 ぬくもり感じる木造の橋10選」が掲載されていますが、その選りすぐりの木橋は、この蓬莱橋(5位)を含めて次の通りです。

1位 錦帯橋(山口県岩国市);2位 伊勢神宮の宇治橋;3位 鶴の舞橋(青森県鶴田市);4位 こおろぎ橋(石川県加賀市);5位 蓬莱橋(静岡県島田市);6位 桃介橋(長野県南木曾町);7位 神橋(しんきょう;栃木県日光市);8位 河童橋(長野県松本市上高地);9位 祖谷(いや)のかずら橋(徳島県三好市);10位 猿橋(山梨県大月市)

 日本の三大名橋、三大奇矯とされる錦帯橋を始めとして、それぞれに歴史的な由縁を持つ個性派ぞろいです。
「美し(うまし)国」、「畳(たた)なづく青垣」と詠われた四季折々、情緒豊かな日本の自然風景、そしてそれに溶け込んだ木橋の数々。
 四国の八十八か所巡りも結構ですが、のんびり「日本全国 木橋巡りの旅」というのも、一興ではありませんか?

2025年9月第1号 No.169
(文責:小町谷信彦)