橋の話題15「札幌の日本橋こと創成橋」

札幌の日本橋こと創成橋

「札幌の日本橋」とも呼ばれる橋。そう言われていることをご存知ない方でも「創成橋」では?と連想するに違いありません。日本橋と同じ石造りアーチ橋で、現存する橋としては札幌で最古という歴史を誇っています。
 日本橋も創成橋も有名なわりにじっくりとその姿を見たり、意識しながら渡るということは意外と少ないかもしれませんね。日本橋の付近では記念写真を撮る姿も時々あるようですが、札幌の日本橋こと創成橋も由緒正しき橋なのです。

   

     創成橋(札幌市)                       日本橋(東京都)

「お江戸日本橋」は、言わずと知れた東海道の起点。そして、江戸の水運の玄関口で物流の拠点でもあったので、江戸時代以来、水陸の交通の拠点として栄えてきました。
一方、創成橋も舟運による物資の陸揚げ地で旅人宿や呉服屋、飲食店などが次々と生まれ、鉄道が開通した明治13年頃には南1条の商店街は大いに賑わっていたようです。
そして、北海道における最初の幹線道路「札幌本道」(現在の国道5号、36号)の終点も程近く、交通の要所ということもありますが、もう一つの類似点は、橋の高欄(こうらん:欄干)の上に付いている擬宝珠(ぎぼし(園芸品種のギボウシはこの擬宝珠の訛ったものですね))です。江戸時代には、擬宝珠を橋に付けることが許されていたのは中納言以上の位の高い藩主のみだったとのこと。ちなみに、東京で擬宝珠のある橋は、江戸城見付御門の他は日本橋と京橋の二橋だけで、創成橋は北海道神宮の行列の神様がお休みになる南1条東2丁目の頓宮への表参道という格式高い位置づけの橋だったのです。

余談ですが、実は「日本橋」は東京だけでなく、まぎらわしいことに大阪にもあり、東京の日本橋は「にほんばし」、一方、大阪の日本橋は「にっぽんばし」と読むのだそうです。読み方の違いでどこの日本橋か判別できて便利と言えば便利ですが、面白いものですね。これには続きがあって、「大阪には橋(はし)がない」という古い小話のネタがあるそうです。淀屋橋(よどやばし)、心斎橋(しんさいばし)、天満橋(てんまばし)等々、一部の例外はあるようですが、確かに「ばし」はあるけれど「はし」はないですね。
脱線ついでに、「大阪の食い倒れ、京の着倒れ」とは良く耳にする言葉ですが、昔、「大阪の杭だおれ、京の気だおれ」とも言われたそうです。橋と言えば木橋だった江戸時代、腐って傷みやすい橋の維持は、町衆の負担金で実施していたようですが、なかなか大変な重荷だったのですね。

   

     創成橋とテレビ塔                      日本橋からの風景

さて、上の2枚の写真を見比べてください。「札幌の日本橋」は、なかなか絵になる風景。
今は、創成川公園が整備され、季節ごとの花や親水エリアもあり、多くの人で賑わっています。

一方の本家日本橋は、高速道路の橋の下。ちょっと寂しい感じがしてしまいます。
同じ思いを持った人が多かったのでしょうか、国土交通省は昨年(2017年)11月、かつての日本橋の風情を取り戻すべく首都高速道路の地下化の検討に着手しました。地下鉄4路線が交錯し、様々なライフラインが網の目のように埋設されている中での「針の穴を通すようなルート」になるようですが、技術力と知恵を結集して、我が国を代表する名所として「お江戸日本橋」を復活させてもらいたいものです。         (文責:小町谷信彦)

                                       2018年5月 No2