橋の話題 6「レオナルドダビンチの橋」 

レオナルド・ダ・ビンチの橋

レオナルド・ダ・ビンチと言えば代表作「モナリザ」。
近年、赤外線分析で4枚の下絵が隠されていることが明らかになりました。今、わたしたちが観ている絵の「一つ下の絵の女性」が「本当のモナリザ」で、現在の絵のモデルは「モナリザではない」、という説が出てきたり、ダ・ビンチの弟子が描いた「裸身のモナリザ」には、ダ・ビンチが描いた原画が存在したのではないか?という専門家がいたり、いろいろ未解明な謎が多く、いまだに人々の好奇心を誘っています。
謎めいているのは絵画そのものだけではなく、1911年にはなんと盗難に遭っているんですね。その容疑者として有名な詩人アポリネールが投獄されてしまったり、事件への関与が疑われた、あのピカソまでが警察に連行されるというルーブル美術館始まって以来のスキャンダルもあったりと、名画ゆえに話題には事欠かないのです。

このコラムの話題にも少しは寄与しているのです。多くの方はモナリザの謎めいた微笑に目を奪われるかもしれませんが、背景に小さく連続アーチ橋が描かれているのです。ルーブル美術館まで観に行ければ良いのですが、それはちょっと無理。インターネットで検索してみて下さい。

ダ・ビンチと橋との関わりはこれだけではありません。他にも興味深いものがあります。

これは、ダ・ビンチが当時のトルコ皇帝からの依頼を受けて設計したゴールデンホーン橋(トルコ)のスケッチです。この橋は、コンスタンチノープル(現在のイスタンブール)の街を分断するボスポラス海峡を跨ぐ橋長240mの長大な石橋なのですが、当時の技術では実現不可能で、この21世紀の橋と見まごう美しい曲線のアーチ橋は残念ながら未完の幻となりました。ちなみに、トルコ皇帝はダ・ビンチだけではなく、建築家としても名を馳せたルネッサンスのもう一人の天才ミケランジェロにも設計を依頼したのですが、断られたとのこと。
ところが、驚くべきことにこの橋は、500年の時を経て幻が現実になったのです。ノルウェーの美術家ヴェヴョーム・サンド氏がダ・ビンチのデザインに感銘を受け、自国の公共道路協会にこの橋の建設“レオナルド・ブリッジ・プロジェクト”を提案。5年がかりの努力が実り、2001年にオスロとストックホルムを結ぶハイウェイに架かる小さな歩道橋として実現したのです。ダ・ビンチの原案より橋長は少しだけ短く108m。アーチは、石ではなく三角形断面の木の集成材に変わりましたが、ほぼ原画に忠実に造られたようです。
興味のある方は、WEBサイトを検索して写真をご覧になってください。感嘆しますよ!
もう一つ、ダ・ビンチの天才性が発揮されたユニークな橋のアイディアがあります。それは「スウィング・ブリッジ」(旋回橋)という可動橋。片側の岸辺に備え付けた支柱を軸にして滑車で橋を旋回させて、船が川を上り下りする時には船の通行の支障にならないように橋を岸辺に横付けし、人が川を渡る時には川の流れと垂直の方向に旋回させて両岸を橋渡しする仕組みになっています。実はこれには、人と船の利用の両立の他にもう一つの利点があります。万が一、敵が攻めてきた時には橋の向きを変えてしまえば、その進軍を防ぐことが出来るのです。軍事戦略家、軍事技術者としての才にも長けていたダ・ビンチならでは発想と言えそうですね。

「古きを学びて新しきを知る」とは、先人の思想や学問から現代に通じる精神を学ぶというニュアンスでよく使われますが、日本の室町時代の設計が現代でそのまま通用するというのは驚きです!ダ・ビンチは、もしかすると宇宙人だったのかもしれませんね。                            

                                                (N.K)