川の話題17「水資源問題~地球温暖化と仮想水(バーチャルウォーター)」

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 近年頻発している大雨は水害や土砂災害をもたらすため、地球温暖化による気象変動の影響が問題視されていますが、温暖化により渇水のリスクも高まっているようです。というのは、専門家によると世界の気温が上昇した結果、降雨パターンが複雑に変化し、雨が降る時と降らない時の差が極端になり、豪雨が多くなるだけでなく、1日の雨量が1mm未満の無降水日も増える傾向があると言うのです。
 顕在化していないのであまり話題になりませんが、実は東京の一極集中は水資源に関しても大きな問題です。東京都は、1日の給水量(生活用水+工業用水)約600万㎥の8割を利根川・荒川水系や相模川といった域外の水源に依存していて、自前で賄えているのは1400万人の人口の約2割、わずか300万人に過ぎないのです。
 実際、2023年は積雪が少なく、3月の利根川水系のダム群の貯水率は36%にまで低下し、危機感が高まりました。結果的には杞憂に終わりましたが、常に渇水リスクをはらんでいるのです。

 さて、日本全体で見ると、山が少なく川が短い沖縄や四国のように渇水にしばしば見舞われる地方もありますが、総じて温暖多雨のモンスーン気候のわが国は、水には恵まれているというイメージをお持ちの方は多いことでしょう。しかしながら、近年注目されるようになった「仮想水(バーチャルウォーター)」という見方で水資源を捉え直すと、全く異なった現実が見えてきます。
 「仮想水」とは、ロンドン大学のアンソニー・アラン名誉教授が1990年代に提唱した考え方で、輸入した食料の生産に必要な水を食料と一緒に輸入したとして計算した水の量です。
 日本はと言うと、カロリーベースの食料自給率が38%(2022年度)に過ぎず、多くを輸入に頼っているので、主要穀物と畜産物の仮想水総輸入量は年間約60万兆リットル以上に上ります。これは国内の灌漑水量を上回り、仮想水輸入量は世界一と考えられるようです。かなり昔、「日本は、水と空気と安全がタダの世界で唯一の国」と語りましたが、どうも私達は水の価値をもっと認識した方がよさそうですね!
 ちなみに、世界の水資源の7割が農業用水で、その22%が輸出品の生産に使用されているとのことですが、日本や英国、ドイツ、イタリアが主要な輸入国、米国、カナダなどが主要な輸出国となっていますが、食糧危機の問題と同時に水の危機も地球規模での大きなリスクとなっているのです。

 一方、北海道は、食料自給率が223%(2021年度)。給水を100%自前で供給しているだけではなく、仮想水という観点からもわが国の水資源問題に大きく寄与しています。
 こういうことを知ると、日本の食糧基地としての自負を持って、この豊かな大地をこよなく愛する思いが、少し強まりませんか?

2024年5月第1号No.144
(文責:小町谷信彦)