ふと、橋の支柱にブロンズ像が立っていることに気付いた。突然のように、霧の中から現れた裸婦の像。両腕を挙げ、闇の中で何かに耐えるような、何かを訴えているような姿。淡い街灯の光に照らされた幻想的な像に、しばしの間、見入っていた記憶がある。
彫刻のある橋――幣舞橋は、私の中ではそんな橋として胸に刻まれることになった。
釧路川の河口に近いこの場所に最初に橋が架けられたのは1889(明治22)年。民間の会社が造った「愛北橋」という木橋で、長さ216㍍、幅3・6㍍。当時は道内で最大の橋だったが9年で倒壊し、新たに建設されたのが初代の幣舞橋である。この一帯の地区名が名前の由来だという。
だが、これも9年という短命で崩れ、その年のうちに完成した2代目も簡易トラフという木組みの構造だったためか、さらに短い6年の利用にとどまった。3代目は1915(大正4)年に完成したが、これまた短命で役割を終えてしまう。
これに代わる4代目は、道内で最初に鉄筋コンクリートが使われた橋で、1928(昭和3)年に完成する。ヨーロッパ風のデザインを採り入れた優美な姿が北海道の3大名橋(他は札幌の豊平橋と旭川の旭橋)と讃えられるものだった。
その橋も半世紀近くが過ぎると老朽化や周囲の渋滞解消などへの対応が必要になり、5代目への架け替えの議論が始まる。