岡山橋
~道路の神様 高橋敏五郎の若き日の技
 文・写真 秋野禎木

公開

 古い建築物には、長い時間をかけなければ醸し出されない風格、風情があると、いつも思う。岩見沢市を訪ね、姿のいい岡山橋を見つめながら、改めてそんな感慨に浸った。
 この橋の竣工は1936(昭和11)年6月。それまでの木橋から、この時代はまだ珍しかった鋼橋に架け替えられた。設計は札幌土木事務所の技手だった高橋敏五郎。後に、札幌―千歳間の国道36号の改良工事で国内初のアスファルト道路を短期間のうちに実現させるなど、「道路の神様」と呼ばれることになる人物である。

 まだ20代の若き技術者だった高橋が様々な検討を重ねて決めたのが「鋼ソリッドリブ式タイドアーチ橋」と呼ばれる形式。アーチの両端を弓の弦のように引張材でつないで橋台にかかる力を弱め、軟弱な地盤に対応する設計で、このタイプの橋は道内では初めての架橋だったという。現地の特性や豪雪地帯という気候条件を踏まえ、橋の将来を見据えながら、当時の最先端の技術力を駆使して導き出されたスタイルだったようだ。
 隣の三笠市から流れる幾春別川の両岸をつないだ橋は橋長55㍍、幅員7・5㍍。周辺の炭鉱で石炭の増産が勢いを増し、物流も加速度的に活発になっていたころだ。国道27号(当時)に姿を現したアーチ橋は力強く、まだ数えるほどしかなかった鋼橋を、周辺住民も頼もしく眺めたことだったろう。

 それから86年。歳月が、この橋の上にも流れた。戦火の時代、敗戦からの復興、石炭産業の隆盛と衰退……。人々が橋を渡り、物資を満載にしたトラックが走り、住民を乗せてバスが往来した。橋は人々の暮らしを支え、同時に人々の暮らしが橋の存在の意義を高めてここにしかない歴史を刻んできたのだ。
 戦後、この道は国道12号になり、それが新しいルートに切り替わってからは市道として利用されている。老朽化に伴って2008(平成20)年から補修工事が行われ、4年後に利用が再開された。その際、戦前の貴重な鋼橋の一つであることなどから「選奨土木遺産」に認定された。「をかやまはし」という架橋当時の橋名板も残されている。
 橋の傍らに立って、ここを踏みしめた無数の人々の歩みを想像する。技術の結晶と人々の暮らし。それらが溶け合って漂う唯一無二の存在感。橋と人の営みはこの先も静かに重ねられ、風景は奥行きと味わいを深めていくに違いない。

<交通アクセス>
【車】JR岩見沢駅から約5㎞
  旧国道12号(国道12号新・岡山橋付近)

 

文・写真
秋野禎木
(あきの・ただき)

元朝日新聞記者/現北海道大学野球部監督
1959年生まれ、北海道小平町出身

さまざまなタイプのアーチ橋

アーチ橋は、弓なりのアーチ部材(アーチリブ)を主構造として荷重を伝達する橋梁ですが、さまざまなタイプがあり、構造材料や支持構造など、色々な観点で分類できます。

【構造材料による分類】
① 鋼アーチ橋 : アーチリブが鋼材や鋼管
② コンクリートアーチ橋 : アーチリブがコンクリート

【支持構造による分類】
① 無補剛アーチ橋 : 基本的に全ての荷重に対してアーチ部材のみで抵抗
② 補剛アーチ橋  : アーチ部材と補剛した桁の両方で荷重に抵抗
           
【無補剛アーチ橋 ヒンジ(支点)の違いによる分類】

アーチ橋の機構(出典:ウィキペディア「アーチ橋」)

(出典:ウィキペディア「アーチ橋」)

 

 

アーチリブの両端部がヒンジ構造
鋼アーチ橋の一般的なタイプ

 

 

アーチリブの両端部をヒンジ構造、中間点をヒンジ結合
あまり一般的ではない特殊なタイプ

 

アーチリブの両端部が地盤と一体化
鉄筋コンクリートアーチ橋では一般的なタイプ

 

 

桁部に水平反力を負担させる構造
両端の地盤に水平力を負担させるのが難しい場合に採用