土木の話題
土木の話題「AIの光と陰~インフラへの活用とリスク」
2026年9月28日 公開 昨今、世界がAI特需で沸騰しています。AIが学習、推論するのに必須のデータセンター(高性能なGPUサーバーの集積施設)が建設ラッシュで、関連する半導体などの製造も絶好調、世界経済は活況を呈しています。
しかしながらこの突然のAIブーム、様々な問題も引き起こしています。
そもそもAIは、色々なリスクを抱えているのです。例えば、定型的なデスクワークやシステムエンジニアの仕事の相当部分はAIに置き換えられるとも言われ失業問題が懸念されます。また犯罪に悪用される可能性、軍事利用による戦争への影響、さらには近い将来、AIが人間の知能を超えた時、人間の尊厳という観点からもAIの在り方が、大きな倫理的問題として問われることになるでしょう。
さて、このAIによる影響は大きな意味での社会インフラや土木の世界にも大きな光と影を投げかけていると言えそうです。
その光は、社会インフラの維持管理・点検の効率化です。国土交通省が推進しているインフラDXを強力に後押しする貴重なツールとして生成AIの活用が始まっています。
では陰の部分はどうでしょうか?
最大の問題は、データセンターが大量の電力と水を消費するという点です。
データセンターは、コンピューターを動かす電力だけでなく、それから発生する大量の熱を冷やすための冷却装置にも多大な電力を要します。
つまり、その建設が進めば進むほど、世界の電力消費量は鰻登りに増加する、これが第一の問題です。防止のために温室効果ガスの排出量の削減や電力消費の総量の削減を目指す世界のトレンドと努力に逆行するものにほかなりません。
またデータセンターは、効率的に装置を冷却するために多量の水を消費することから、世界各地で限られた水資源を巡る争奪戦が始まっています。
世界の水の使用は現状、約7割が食料生産、残りを他の経済活動と市民生活で分け合っているが、そこにデータセンターが割って入ったという構図です。そしてこの状況に危機感を抱いた国連大学は「地球規模で『水破産』が進んでいる」と警告しました。
さらにそれに追い打ちをかけるように、2026年の夏、欧州を熱波と干ばつが襲ったのです。
ライン川の水位は大きく下がり、工業製品を輸送する船舶の航行にも支障が生じ、ドイツのサプライチェーン(供給網)は大混乱、GDP(国内総生産)成長率を0.3%押し下げると予測されるほどの大打撃を受けたのです。当然、水力発電も危機的な状況です。
ところで、2025年に閣議決定された第7次エネルギー基本計画は、安全性(Safety)を大前提に、エネルギー安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)と環境適合(Environment)を図る、いわゆる「S+3E」を基本的視点としている、とのことです。
東日本大震災は原発の安全性に疑問を投げかけましたが、その一方で、地球温暖化、自然災害の激甚化への危機感からカーボンニュートラルの波が広がり、とはいえ、再生可能エネルギーの限界も見え始め、そうこうするうちにホルムズ海峡の封鎖によるエネルギー危機。本当に現代社会は、先が読めない混沌のただ中にあります。エネルギー問題は私達人類の将来を左右する大問題ですが、AIの登場はエネルギー問題に混乱をもたらしたというだけではなく、その使い方次第では大きな役割を担うかもしれません。
そんなことを思いめぐらしている折も折、土木学会誌2026年9月号のテーマは「エネルギー転換と社会基盤」、まさに時宜にかなった特集が組まれ、土木技術が決め手となる洋上風力発電等についての記事も掲載されていました。
相反する課題「S+3E」、この解をどのように見出していけるか?
今人類の知恵が試されている、と言えそうですが、土木の出番もまだまだたくさんありそうです!
2026年9月第2号No.189
(文責:小町谷信彦)
