札幌市北区あいの里の庚申塚には、山岳信仰の開祖といわれる役の行者像が奉られている。右手に錫杖(つえ)、左手に金剛杵を持ち、台座に「見ざる、言わざる、聞かざる」と刻まれている。“三ざる”ともいわれ、何事も慎み深くあらねばならないとする教えを指す。
この塚もまた長年、多くの人々の願いを受け止めてきたであろうことは容易に想像できる。その願いは、日照りが続いたら早く雨が降りますように、赤子が生まれたら無事に育ちますように、病人が出たら一日も早く治癒しますように、というように、広範に及んだことであろう。
秋が深まり、収穫の季節になると、人々はわが家で育てた農作物や果物を神前に供えて、感謝の意を表した。神と人とが一体になるその日こそ、祭りの日であった。
そんなことを考えながら、周辺に広がる地域をゆっくり歩いた。いまは収穫期も済んで静かな佇まいである。
風がひときわ冷たくなってきた。厳しい冬がきて、また春がめぐってくる。庚申塚の前にたたずみ、大自然の織りなす変現を感じながら、この平和がいつまで続くかと、考えていた。