炭鉱とは、「地底の王国」と言えるのかもしれない。地上の建造物からは推し測れない規模の坑道が地底奥深く、様々な先端技術を駆使して縦横無尽に張り巡らされていく。そこは、常にガス爆発や火災、落盤などの危険にさらされる現場でもあったが、労働者たちは粉塵にまみれながら、その奥に眠る「黒いダイヤ」を掘削した。幾春別炭鉱は最盛期、年間18万㌧の石炭を産出し、地上の発展と繁栄を約束した。
石炭は、それを運ぶ鉄道や港湾、さらには製鉄業など様々な産業の起点でもあった。空知の石炭、室蘭の製鉄、小樽の港湾などを緊密につながる一体のものとして、この立坑櫓を含めた産業遺産群が「炭鉄港」の名で日本遺産に認定されている。
立坑櫓という「地底の王国」の入り口に立って、自分たちはいま、近代からつながる歴史の時間軸のどの辺りを歩いているのかと、改めて思いを巡らせてみる。そして、どこへ行くのかと……。
樹林に響く鳥の囀りが、あたりの静けさを一段と深めているようである。