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車と動物が共存する道

2026年8月18日 公開

 今から5年前に「動物の道とロードキル」注)というタイトルで本コラムに「ロードキル(野生動物の交通事故死)」の問題を取り上げ、さまざまな事故防止対策が進められていることをご紹介しました。しかしその努力の甲斐なく、事故はますます増え、全国のロードキルは年間12万件にも達しました。
 例えば、北海道の道路でのエゾシカによる交通事故件数は、令和2年には、7年前の1.9倍の増加だったのが、そのわずか5年後の令和7年には、さらにその1.9倍の増加で、増加のペースは早まっているのです。確かに高速道路には鹿の侵入防止柵が張り巡らされ、道路横断のためのカルバートや橋が設置されるなど、対策は施されましたが、一般道では北海道中に柵を張り巡らせるというわけにもいかず、道内全域で被害は拡大しています。

(出典:北海道警察ホームページ)

 では、どんな動物が被害を受けているかというと、タヌキやキツネ、犬、猫などの中型動物が大半で、シカやイノシシがそれに次ぐ数となっています。それに加えて、最近は全国で社会問題ともなっているクマの人里や市街地への出没に伴い、こちらも車との衝突事故が増えてきました。
 またちょっと珍しい動物としては、沖縄のヤンバルクイナやケナガネズミなどの固有種や貴重種も被害を受けています。それで沖縄では事故の多発区間や時間帯を特定し、カーナビに連動させて注意喚起したり、路面標示を増やすなど、観光で訪れる外国人ドライバーにも分かりやすい対策を試行しています。

 さて、このロードキル問題に関しては、対象となる動物の行動特性をよく知ることが大事です。なぜならば、それぞれ動物毎に特性は異なり、それに合わせた対策を講じる必要があるからです。
 例えば、エゾシカであれば、10~11月に年間の死亡数の4割近くが集中しますが、この時期がシカの繁殖期でパートナーを求めて活発に動き回るからです。
 また、春先の事故も多くなりますが、それは冬の食糧不足で弱った体を回復させるため、シカは塩分を取ろうという要求が高まり、冬場に撒かれた凍結防止剤や融雪剤の塩分を求めて道路に集まる、こんなメカニズムもわかってきました。
 一方、事故の時間帯は早朝や日没前後が多いのですが、この時間帯がシカの行動のピークで、悪いことにドライバーの視認性が最も低い時間帯とも重なるからです。他にも、シカの群れは、先頭のリーダーは周りをよく見て行動しますが、その他大勢はリーダーについて行くだけなので簡単に車に曳かれてしまうことや、道路の路面はシカにとっては滑りやすく、しばしば転ぶことなど、なかなか興味深いですね!
 ちなみに、シカによる鉄道事故も運行ダイヤの遅延や車両破損を引き起こし、鉄道会社の悩みの種ですが、なぜ線路にシカが集まるのでしょうか?
一つの原因として、線路に付着した鉄粉をなめていることが明らかになりました。これは、シカ肉に鉄分が豊富に含まれていることがヒントになり、動物用カメラと赤外線動物カウンターを駆使して徹底的に調査したところ、シカは線路周辺で草を食べた後、レールをなめる、ということがわかったのです。

「車と動物が共存する道」、とても些細なテーマにも感じられますが、動物の気持ちになっていつもの自分から離れた視点に立つと、意外と新たな発見があるかもしれません。
 現代の私達は、ともすると「地球は人間を中心に廻っている」という勘違いをしてしまいがちです。
 そんな私達に、「そうではないぞ!」と声を荒げているのが、昨今頻発している大規模自然災害のような気がしてなりません。
 地球温暖化は、人類の叡智と誇る科学技術と豊かさへの探求がもたらしたモンスターと言えるのではないでしょうか?
 漂流する宇宙船地球号の行く末は、私達が自らのこれまでの歩みを謙虚に振り返り、自然に対する畏敬の念を取り戻すことができるかどうかに掛かっているのかもしれません。

注)コラム  道の話題「動物の道とロードキル」https://www.kusanosk.co.jp/trivia/column/road/11638

2026年8月第1号No.186
(文責:小町谷信彦)

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