防災の話題
事前復興の勧め
転ばぬ先に計画を!
2026年4月6日 公開
東日本大震災から15年、多くの被災地は、多額の復興予算により災害に強いまちに生まれ変わりました。しかし、その過程で様々な課題も浮き彫りになってきました。その一つが、住民の意見の不一致から復興計画の策定に手間取り、復興が遅れた結果、他の土地への移住者が増え、新しい街への人口定着が想定を大きく下回ったという問題です。まさに高齢化したコミュニティの維持は、生業となる地域産業の再生という課題とともに、集落の存亡をかけた大問題となっているのです。
どうしたら、この難題を乗り越えることができるのでしょうか?
その第一歩は、行政と地域住民が緊密に連携して計画を練り上げることです。しかしそのためには、相互の信頼関係が不可欠で、十分に時間をかけて良い関係を築いていく必要があります。
そこで今、注目されているのが「事前復興」です。
「事前復興」とは何でしょうか?
大規模災害の発生を想定し、平時のうちに被害を最小化する都市計画やまちづくりを推進する取組です。それで国土交通省は、被災後の復興まちづくり計画(避難場所、重要施設の移転、復興手順など)を事前に策定しておくよう全国の自治体に働きかけ、財政支援しています。
しかしながらこの「事前復興まちづくり計画」、策定済みの地方公共団体は、2025年時点で全体のわずか2%、策定中・検討中も25%に過ぎません。防災のためのハードの必要性については、大規模地震の津波被害想定地域ではその認識が高まり、整備が進んでいますが、どうもソフトの必要性については、十分認識されていない地方自治体が多いようです。
そんな中での優等生は東京都です。東京都はずっと以前から首都直下地震の危険について警告されていたこともあり、東日本大震災の10年前の2001年、全国に先駆けて「東京都震災復興グランドデザイン」を策定し、2005年には「震災復興マニュアル」をまとめました。さらに2013年には東日本の教訓を踏まえて「震災復興グランドデザイン」を改訂し、都民との共有と行政側の対応のスキルアップのための活動を始めました。
そして現在、東京都では2023年に策定した「復興まちづくりガイドライン」に従って、都市復興の手順・執行体制を確立し、復興まちづくり計画の市民への普及・啓発、そして行政機関の実務能力向上に力を注いでいるのです。
周知のとおり、日本は未だかつて経験したことのない少子高齢化社会に突入し、地方都市は存亡の危機を迎えています。この難局を乗り越えるためには、これまでの役所頼み、他人まかせから脱して、地域住民一人一人が地域の将来を考え、知恵をしぼり、汗を流して、自分達の町を創っていくという主体性が欠かせないでしょう。つまり役所主導のまちづくりではなく、住民も自助努力を惜しまず、官民協働のまちづくりが求められる時代になったのです。
これは災害への備えに関してもしかり!
わが故郷 北海道でも、事前復興まちづくりの取組は、残念なことにまだあまり進んでいないようです。
「備えなければ、憂いあり」にならないことを、案ずるばかりです!
2026年4月第1号No.180
(文責:小町谷信彦)
