橋の話題 2「映画の舞台としての橋 その1」 

映画の舞台としての橋 その1「会えそうで会えない橋」

橋は重厚で長持ち。構造形式、耐用年数とか、通過交通量とか、機能の面が重視されがちな硬い土木構造物。
でも、映画のワンシーンで重要な役割を果たすのも橋。実は洋の東西、時代を問わずしばしば登場します。

私の大好きな映画の一つ「哀愁」(1940年公開)は原題が「Waterloo Bridge(ウォータールー橋)」。20世紀を代表する美人女優の一人、ヴィヴィアン・リーの代表作で、これまたイケメンのローバート・テーラー扮する英国将校との恋物語。ウオータールー橋での運命的な出会い、そして悲しい橋の上での結末。ご覧になった方は、思わず涙してしまう霧のウオータールー橋のラストシーンが脳裏に蘇るのではないでしょうか?

そして、この「哀愁」の日本版といえるのが「君の名は」。若い方は、昨年大ヒットしたアニメの「君の名は。」を思い浮かべるでしょうが、レトロな映画好きしか知らない古典的な白黒映画。もともとは、戦後間もないラジオ全盛の時代のラジオドラマだったもの。昭和28年に岸恵子、佐田啓二という当時売出し中だった往年の名女優、名男優が一世を風靡した映画です。ラジオドラマは、「木曜日の放送中は日本中の銭湯の女湯が空になった」という伝説が残るほどの人気で、3部に分けて公開された映画も大ヒット、さらにテレビでもリメーク、リメークで今までに四度も連続ドラマ化。この数寄屋橋を舞台に繰り広げられるすれ違いドラマは、スマホ時代の今ならあり得ない話ですが、さしずめメロドラマの舞台の、西の横綱がウオータールー橋なら数寄屋橋は東の横綱でしょう。
 
橋は恋愛ドラマの舞台としては格好の舞台。その秘密を考えてみましょう。出会いの場、待ち合わせに必要なのは、「ドラマチック」であることでしょうか。ありきたりのAB広場やSA駅との決定的な違いは、橋には町と町を繋ぐ、人と人を繋ぐ、向うから来る、そしてこちらから行く、そんな向かい合い、そして結ばれるというイメージがロマンチックを醸し出す魔法の秘密ではないでしょうか。
映画「哀愁」では、ロンドン名物の“霧”が、会えそうで会えないに加え、見えそうで見えない、徐々に見えてくる、という橋ならではのロケーションを活かした演出になっていました。
会えそうで会えない。でも、そこで出会うことができるのが橋の役割。とってもロマンチックな一面を橋は持っているのです。

(N.K)