道路舗装の景観デザイン ~宇佐八幡旧参道のリニューアル事例~
東京大学
名誉教授 堀 繁

景観整備というと余計なお金のかかる話と思われがちだが、道路に舗装は付き物。
どうせ舗装をするなら同時に道路の魅力も高めたいものだが、あまりお金をかけずにどうすれば効果を出せるか?そのような問題意識で景観デザインの手法を活用して道路景観を向上させ、沿道の活性化を図った道路舗装のリニューアル事例をご紹介する。

(1) 道路舗装デザインのリニューアルまでの経緯

宇佐神宮(通称「宇佐八幡」)は、大分県の国東半島の付け根に位置する宇佐市にあり、全国の八幡宮の総本山で、日本史の教科書にも登場する和気清麻呂(わけのきよまろ)が道鏡をめぐるご神託を伺いに行った奈良時代以来の由緒正しい神宮として知られている。しかし、古来からの参道が明治維新の廃仏毀釈で新参道に切り替えられて以降、旧参道周辺が寂れてしまい、伝統に則った天皇家からの勅使が10年に一度参詣する際に見栄えがしないということで、道路の舗装を景観に配慮したデザインでリニューアルすることにより、参道景観を一新し、沿道の活性化を図ることとなった。

(2) 舗装の景観デザインの基本方針

舗装はデザインという観点から、①無地、②地模様(ランダム、迷彩など)、③図(ゲシュタルト)の3種類に分類される。そして、①と②は、それ自体に意味を持たない「地のデザイン」でメッセージを発しないが、③の「図のデザイン」は、図が表現する形(ゲシュタルト)を言葉で表現できるデザインで、その内在する意味がメッセージとして利用者に伝わることから、その道路の役割や特性に相応しい適切な「図のデザイン」を取り入れることが、道路を魅力的なものにする重要なポイントとなる。
そこで、宇佐八幡旧参道のリニューアルでは、以下の点に留意して「図のデザイン」を具体化し、整備を進めた。
① 道路の中央部分を目立たせ、エッジを重視
② 1分の1の実物大のデザイン案を3パターン、住民に提示し、住民による討議・選択によりデザインを決定
③ 普通の参道区間(線)とイベント等の広場的利用も行われる観光協会前のエリア(面)とで舗装の図を変える(「線のデザイン」と「面のデザイン」を使い分け)
④ 舗装材料は場所に応じて使い分けることによりコストダウン

(3)道路舗装の景観デザイン手法

① 舗装材料の構成

中央部は図模様の造りやすい石材、両端部は廉価なインターロッキングブロックを使用してコストダウンを図った。

② 図のデザイン  A) 車道のデザイン

旧参道の図のデザインは、道路軸方向に連続する線のデザインとして「前に進みましょう」というメッセージを発信させた。

    B)広場のデザイン

観光協会の前の道路部分は、広場を意識させる狙いの図のデザインとして面のデザインを使い、車の一時停止と歩行者の立ち寄りを促した。

    C)店舗前のデザイン

沿道の店舗の前は歩行者の足を止めさせる狙いで舗装パターンを変えた。

③ エッジのデザイン

特に人間の目が認識しやすいエッジのデザインに留意した。
幅員の狭い脇道の舗装パターンは参道と変え、メインとサブの違いを明確にした。

(4)地域住民との合意形成

1分の1の実物大の舗装パターンを地域住民に見せて具体的な舗装の仕上がりイメージを共有してもらいながら検討を進め、数案の舗装パターンの中から選択、決定してもらい、スムーズに地域での合意形成を図ることができた。

現地での原寸大図面を用いた住民参加の検討状況

東京大学名誉教授 堀 繁
1952年東京に生まれ、下町浅草駒形育ち。東大農学部林学科卒業後、造園職で環境庁に入り、阿 寒、日光公園でレンジャーを経験。環境庁自然保護局主査、東京大学農学部助手、東京工業大学社会 工学科助教授などを経て、平成8年3月より東京大学アジア生物資源環境研究所教授を22年間務め、平成30年3月に退職。平成30年4月より(一社)まちの魅力づくり研究会理事。
専門は、景観デザイン、景観工学、計画設計思想 史、地域計画など。国土審議会、歴史的風土審議会の他、山形 県、福島県、埼玉県の各景観審議会 など国、公団、地方公共団体の各委員会座長・委員等を歴任。地域の発展を前提とした景観、アメニ ティ、観光リゾート、自然環境保全の計画設計を中心課題とし、伝統的都市のデザイン規範に関する 研究、都市及び農山漁村の空間と景観の特徴に関する研究などを行う。 著書に、「景観からの道づ くり」、「景観統合設計」ほか多数。