防災の話題 5「災害~この古くて新しい話題 」

災害~この古くて新しい話題

地球上に生物が誕生したのは今から約40億年前と言われ、化石の研究などから波乱万丈の盛衰の道をたどってきたと科学者たちは推測しています。
その原因として考えられているのが、大きな気候変動や恐竜の絶滅の引き金になったとされる巨大隕石の衝突などの事象です。いわば、地球の歴史は、太古から災害の歴史でもあったのです。

当然のことながら、人類史においても古くから災害は登場します。
例えば、旧約聖書には「ノアの箱舟」だけが生き延びた大洪水の話が記述されていますが、場所や民族を問わず世界各地で語り継がれている大洪水説話が、これを裏付ける伝承だと確信して箱舟を探し続けている探検家たちもいます。そんな中、2010年に香港の探検家チームが、トルコのアララト山の山頂付近で、推定紀元前2800年頃の木の化石を発見し、「ノアの箱舟」だと主張しています。その信憑性はわかりませんが、「ノアの箱舟」に関する聖書の記述には、科学的・技術的な視点でとても興味深いものがあります。
それは、箱舟の寸法や製造方法に関するものです。旧約聖書には、「脂(ヤニ)質の木の材で、内側も外側もタールで覆い」とか、「箱舟の長さは300キュビト(133m)、幅は50キュビト(22m)、高さは30キュビト(13m)」(1キュビト=44.5cm)という記述があります。つまり、ノアの箱舟は、3階の層の巨大船だったのでしょう。あの豪華客船タイタニックに匹敵する大きさになります。長さ・幅・高さの比率は、現在のタンカー等の大型船の設計で最も安定していると言われる比率とほぼ同じ。船舶工学という言葉すらなかった紀元前の時代に、現代にも通じる造船技術の知恵が記されていたというのは驚嘆に値します。
ノアの箱舟は、神が預言した大洪水を誰も信じない中、ノアの家族だけが神の指示に従って苦労して作った箱舟に避難して生き残るという話ですので、人類最初の災害避難の成功事例と言えるかもしれません。

さて、記録に残っている大災害を見てみると、中国で多く発生していることがわかります。面積が大きく人口も多いことも影響しているのか、1931年の中国大洪水(長江と淮河)、1887年の黄河洪水など、とても大きな被害がもたらされました。
また、サイクロンや台風、津波というのもとても大きな被害を生み出してしまっています。
サイクロンは高波、記憶に新しい東日本大震災やスマトラ沖地震は津波で、水に起因するものが如何に多いのかを思い知らされます。
世界の四大文明は大河の氾濫と治水の闘いの中から生まれたとされていますが、水の脅威との闘いは過去から現代まで連綿と続いていることがこれからも裏付けられます。

私たちには欠かせない水は、今の日本では日々の暮らしの中で当たり前に存在します。そして、水にまつわる言葉もたくさんあります。例えば「水商売」に「水物」というはその二面性を表しているのかもしれません。生命の源で生きていく上で必須の貴重な水ですが、「不安定」で「変わりやすく」、「予想がつかない」、何とも扱いにくい相手。
生命や地球環境を守っているのと同時に、恐怖にもなってしまう水。人類の歴史と同じくらいの長さでその付き合い方を考えてきたのでしょうが、もっともっと上手に付き合っていく知恵を学ぶ必要がありそうですね。

(文責:小町谷信彦)
2019年3月第4号 No.56