橋の話題
橋の話題「未完の橋 あれこれ」
2026年8月31日 公開世の中には意外とあちこちに「未完の橋」はあるようです。そして「ゴーストブリッジ」とか「未成橋」とも呼ばれるそれらの橋を訪ね歩くマニアもいるそうです。橋がなぜ未完なのか、その理由はさまざまですが、多くは、計画の頓挫や予算不足、あるいはアクセス道路の未完成によります。中には、その歴史をひも解くと興味深い話が隠されていることもあります。
北海道にも未完のまま、その歴史の名残を今も留めている橋があります。
その一つが、函館市戸井町(旧亀田郡戸井町)の旧国鉄戸井線の鉄道橋です。この旧戸井線の建設計画、元々は戸井の地元住民が要望から始まりましたが、津軽海峡の東口の防衛という国防上の理由が加わったことでとんとん拍子に進み、1936(昭和11)年着工しました。これには、遡ること30余年、日露戦争の時、当時の函館要塞が脆弱だったためにロシア帝国のウラジオストク艦隊が津軽海峡を通過するのを阻止できず、日本の商船や軍の輸送船が次々と撃沈され、北海道が孤立した、という苦い経験が影響していました。この失敗を教訓として、函館山の砲台のほかに、北海道側の白神岬と汐首岬、そして青森県側の竜飛岬と大間崎にも砲台を設置し、それに合わせて函館から戸井の汐首岬を繋ぐ鉄道建設(約20.8km)が計画されたのです。そんな中、日中戦争が本格化し、その後押しもあって工事着手が決まったというわけです。
しかしその後、戦局の悪化や資材不足により、あとわずか2.8kmというところまで工事は進んでいたにもかかわらず、1943(昭和18)年に工事は中断されてしまいました。残念なことに、ここを列車が人や物資を乗せて走ることはなかったのです。
とは言え、旧戸井線の跡地の多くは函館市の市道や緑道・歩行者自転車専用道として利用され、無駄にはならなかったのが何よりの慰めです。
8連コンクリートアーチの旧戸井線汐首岬鉄道橋
海に迫る断崖のこの最難関区間の工事は完了したものの、ここから終点の戸井駅までが未完に終わった
もう一つご紹介したい「未完の橋」は、日本から海を隔てた隣国、近いけれど足を踏み入れられないという意味では遠い国、北朝鮮の「新鴨緑江(おうりょくこう)大橋」です。
鴨緑江は北朝鮮と中国の国境となり、歴史的にも朝鮮半島と中国大陸・満州との接点となる重要な川です。そこを跨ぐ橋は二つありましたが、三つ目の橋として2011年に建設が始まったのが、全長6,024m片側2車線の長大橋・新鴨緑江大橋でした。そしてこの橋は、実は2014年に完成しました。
では、完成しているのに何故「未完の橋」と呼ばれるのでしょうか?
それは、まだ開通していないからです。というのは、この橋は北朝鮮と中国との経済交流が進んでいた時代に中国から1億5000万ドルという多額の資金援助を得て建設が始まったのですが、その後、中朝関係が悪化、新型コロナ禍で人と物の往来禁止という不運もあり、いまだに開通せず今日に至ったというわけです。
近年、両国の関係改善から「今年こそ開通するのでは」という期待の声が毎年上がるそうですが毎年空振りに終わっているとか。今年はどうなることでしょうか?
完成した新鴨緑江大橋(出典:Wikipedia)
さて、橋は、地域と地域を繋ぎ、人と人を繋ぎますが、新鴨緑江大橋は国と国を繋ぎます。
一方、国防が主目的の旧戸井線の鉄道橋は、逆に国と国とを分断する橋と言えるかもしれません。
願わくば、世界中が橋で繋がり、地域と地域、国と国、民族と民族が繋がり、世界中の人々の心が平和で満たされますように!
2026年8月第1号No.186
(文責:小町谷信彦)
