土木の話題
ブルーカラービリオネア~AIが拓く現場の未来
2026年5月4日 公開 『ブルーカラービリオネア』と呼ばれる人達が、今アメリカで注目されています。
「ブルーカラーがビリオネア(億万長者)とは、どういうこと?」と思われる方は多いかもしれません。
アメリカでは近年、建設業などの現場職、いわゆるブルーカラー、とりわけ専門的な技術を持つ熟練技術者の中から、多くのビリオネアが誕生しているそうです。
たしかに、日本でも土木や建築の現場で作業する労働者の人手不足は大変な問題で、労務費は上昇し、最低賃金も引き上げられたりしています。それでも、そんな億万長者が出たという話は聞いたことがありません。
このアメリカと日本との違いは何なのでしょうか?
大きな違いは次の2つと言われています。
① 日本では、顧客や元請企業に価格決定権があり、現場の下請企業は価格を安値に抑えられている。
一方、アメリカでは、現場企業が価格交渉力を持っているので、市場原理によって価格を決められる。
② 日本では、「現場は誰にでもできる仕事」という誤解が根強く、技能・品質が十分評価されないため、技能・品質が高くても賃金・価格が上がらない。
一方、アメリカでは、品質を正当に評価する制度・仕組みが整っているので、質の高い仕事は高く売れる。
つまり、日本の大きな問題は、建設工事の元請・多層下請構造と技能者の能力評価・工事の品質評価の立ち遅れです。それで、国土交通省がその制度改革を進めているところです。
ところで、良くも悪くもさすがアメリカは資本主義の先進国と思わされたのは、会社の熟練職人や現場の責任者に会社の株式や持分を持たせ、成果が資産につながる構造を作る建設会社が増えてきたということで、これがミリオネアを生む一因になっているようです。
昨今のアメリカは、突然、戦争を仕掛けて、世界中を混乱の渦に巻き込むなど、大変な国ですが、見倣える点はまだまだあるようです。
ではこの『ブルーカラービリオネア』、現場の人手不足下のアメリカでの特別な現象なのでしょうか?
どうやら、そうではないようです。
AIが未来の労働環境をどう変えるかを考えると色々なものが見えてくるのです。
最近アメリカのIT系超大手企業が、好業績にもかかわらず、相次いで大量の社員リストラを発表しました。興味深いのは、どういう仕事の人がリストラの対象になっているかです。
主に中間管理職とプログラマーなのですが、どちらも近い将来AIに置き換わるというのです。
つまりAIが、定型的な管理業務やコードの打ち込みを行い、人は企画や戦略を考たり、AIをどう使いこなすかといった、より創造的な仕事や、意思決定だけに専念すれば良いというわけです。
それでこれからは、ホワイトカラー受難の時代とも言われるのですが、AIでは代替できない仕事が他にもあります。それが、営業職や接客業などの人と人とのフェイスツーフェイスの仕事とブルーカラー、例えばとび職人、配管技術者、電気技術者、重機オペレーターなどの熟練技能者と言われています。
今や工事現場のDX化は飛躍的に進み、建設工事もハイテクの時代になりましたが、そこで働く熟練技術者達にとっても輝かしい時代が到来しそうです。
「『建設事業は3K』なんて、いつの時代の話。」
こんな時代が来るのを楽しみにしたいと思います。
2026年5月第1号 No.181
文責:小町谷信彦
